相子智恵
もくれんの花の熟れゆく月夜かな 日下野由季
WEBマガジン『スピカ』(2014.4.2.更新)「日々花々」より。
月夜の白木蓮の花。〈熟れゆく〉に、なるほどと思う。植物の実には使うが、花の形容にはなかなか見ない措辞だ。が、この花にはぴたりと嵌る。白木蓮の肉厚の花が咲きつつあるところというよりも、咲ききったピークから少しくたびれ始めるその瞬間を描いているように思った。
本人も〈この花を見るととりわけ、嗚呼、生き物だなぁ、と思います。清純だけれどどこか生々しい〉と書いているが、まさにその感じ。月光が花の白い肌に射し、花が熟れてゆく。そして最後はクタクタの茶色になるのだ。そのすべての瞬間が、なまめかしいような気がする。この句の春の月がまた、その舞台として艶めいている。
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