樋口由紀子
ふる里は戦争放棄した日本
大久保真澄 (おおくぼ・ますみ) 1949~
第4回高田寄生木賞の大賞受賞作品である。日本国憲法第9条には戦争を放棄すると明記してある。作者は「国ではなく国民に対する愛を感じて、誇れる宝だと思います」と受賞の言葉で述べている。
あまりにもストレートな物言いであるが、今の日本はそれをわざわざ言わなくてはならないほどの状況に追い込まれている。「誇れる宝」が危うくなってきているのだ。「ふる里」には心情と真意が複雑に込められている。
掲句を特選にした渡辺隆夫は「この句には川柳の使命のようなものがギュッと濃縮されている」と書き、同じく特選に推した野沢省悟は「忘れ去られる時事句ではなく、今後ますます重量を持って行く作品になる」と選評にそれぞれ書いている。「触光」37号(2014年刊)収録。
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