樋口由紀子
口あけたまんま歯医者が喋らせる
木原広志
出来れば行きたくない所の一つに歯科医院がある。実は今、奥歯に違和感があり、ときどきびりっと痛む。歯医者に行かねばと思いながら、なんとか行かずに治らないものかと思っている。
掲句は歯科医院での出来事をコミカルに捉えている。「どこが痛いですか」「がまんできますか」と言われても、口をあけたままでは思うように喋れない。その状態ではうまく喋れないことを歯科医は知っているのだろうか。それにその恰好はなんともあわれで、無防備で降参状態である。うまく返事が出来ないので、しかたなく、うなずくと歯医者は自分の治療にさも納得したようにどんどんと治療を続けていく。もう、どうにでもしてくれという心境になる。
誰でも経験したことのある、そうそうと思う場面をしっかりと押さえて、共感を誘っている。
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