樋口由紀子
こうすれば銀の楽器になる蛇口
八上桐子 (やがみ・きりこ) 1961~
蛇口は蛇口であり、蛇口として使用するものであり、他のものになるなどとは考えもしなかった。しかし、「こうすれば」、確かにそうなる。「こうすれば」とは蛇口を叩くとか蛇口を吹くかな、他にもなにかありそうである。想像すると楽しくなる。蛇口は銀色だから、まちがいなく「銀の楽器」である。
「こうすれば」に作者の意志が感じられ、夢がある。「蛇口を叩く」とか「蛇口を吹く」とかだと身も蓋もなく、句はそれだけで終わってしまう。そうだ、ぎくしゃくしている私だって、見方を変えれば、工夫をすれば、銀のようにきらきらと、楽器のようにりんりんと、なるかもしれない。希望を与えてもらい、視界は拓ける。
〈うつくしい布 うつくしく裂ける〉〈思い出はあやふやになる象の顎〉〈あえいうえおあお 水音になるまで〉 「川柳ねじまき#1」(2014年7月刊 ねじまき句会)収録。
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