相子智恵
四十億年過ぎて我あり流氷と 岡本紗矢
句集『向日葵の午後』(2014.6 ふらんす堂)より
四十億年は、地球に生命が誕生してからの時間だ。その40億年が過ぎた果てに自分がいる。いま眺めている流氷とともに、ということだろう。
生命があるということは、水があるということ。流氷はそこで〈四十億年過ぎて我あり〉の世界と通底しているように思う。
さらに、この句を読んで生物の授業で習った「進化の系統樹」を思い出した。進化しつつ分化していった果ての、人類の我。同じく春になって大きな氷の塊が融け、分離、浮遊してきた流氷。分かれていつの間にか流れついた存在……一句からは、そんな寄る辺なさのようなものまで感じるのである。
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