2014年12月19日金曜日

●金曜日の川柳〔森田一二〕樋口由紀子



樋口由紀子






舌を咬む事の痛さに今日も負け

森田一二 (もりた・かつじ) 1892~1979

舌を咬んだら飛び上がるほど痛い。その事に慣れることなんて到底できない。その痛さを我慢できないことを「今日も負け」と自分を諌めている。身体の痛みと精神の痛み、現在強いられている状況の厳しさと怒りが「舌を咬む」で想像できる。

ああ、やっぱり。でも、信じられない。「舌を咬む事の痛さ」は衆議院議員選挙結果を見た今の私の心境と同じ。予想されていたが、まさかと思っていた。そんなばかなことはないと思っていた。世の中はどんどんきな臭い方向に向かっていくようでおそろしい。

森田一二は新興川柳運動の先駆者で、彼の創刊した個人誌「新生」が川柳革新運動の実質的な起点とされている。また、マルクス主義文学者でもあり、鶴彬に大きな影響を与えた。〈いろいろな穿きもので来る自由主義〉〈ジッと見るなかに一筋槍の先〉〈てっぺんに登って資本縊られる〉 『新興川柳詩集』(1925年刊)所収。

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