2015年1月9日金曜日

●金曜日の川柳〔小野五郎〕樋口由紀子



樋口由紀子






前期高齢スイカの種がよく飛ぶぞ

小野五郎 (おの・ごろう) 1946~

我が家の4歳の孫娘は果物が好きなのに西瓜も葡萄も種があるといやがる。「種がある」言って食べない。種があってあたりまえ、ない方がへんなのだ。もちろん、私は食べなくていいと取りあげて、叱り飛ばす。

「後期高齢者」「前期高齢者」って、いつからこんな言葉が使われるようになったのだろう。そのように一括りにする方が誰かにとって便利で都合がいいのだろう。「前期高齢」は65歳から74歳。作者自身のことだ。スイカをスプーンやフォークでちまちまと食べるのではなく、豪快にがぶっとかぶって、種を遠くまで飛ばす。まだまだ人さまの世話にならなくてもだいじょうぶ。でも、世間では「高齢者」と区分される。「よく飛ぶ」と自己確認するところに愛嬌があって、可笑しい。「おかじょうき」(2014年刊)収録。

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