樋口由紀子
酔っぱらう全人類を代表し
浮千草 (うき・ちぐさ) 1950~
今日は○○日だからとか、酒の肴にいいのがあったからとか、誰かが来たからとか、酒好きの人は何かと理由をつけて酒を飲みたがる。飲みながらもなんやかやと理屈をつけては杯を重ねる。
それにしても「全人類を代表し」とはうまく言ったものである。ここまで思ったことはないはずだが、ひょっとしたらあるかもしれない。お酒を飲むと気分が大きくなり、偉くなったような気になる。飲めば飲むほど気分もよくなり、なんでもこいと思ってしまう。私がみんなを代表して盃をうけ、みんなの代わりに飲んでいる。だから、酔っぱらってしまった。
「無きにしも非ず」の感覚の、誇張の仕方、ユーモア、おおげさな言いまわしはまさしく川柳である。酔っぱらいをいきいきと描き出した。
〈数学は簡単だった生きるより〉〈いざとなったらおばさんという免罪符〉 『夢をみるところ』(あざみエージェント 2009年刊)所収。
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