樋口由紀子
人間の手がしつこいと思うハエ
藤高笠杖
ぶんぶんと顔のまわりを飛ぶハエほどいやなものはない。あっちへいけと追い払ってもすぐにやってくる。ハエは本当にしつこいと思っていた。だから、掲句を読んで、はっとして、笑ってしまった。
ハエにしても目的があって飛んで来ているのであって、追っ払われる手ほど邪魔ものはない。人間ほどしつこいものはないと思っていたのだ。手がしつこいからハエもしつこい。ハエだけがしつこいのではなかった。「しつこい」がなんとも効いている。
それにしても近頃ハエも少なくなった。私が子ども頃は台所などに蝿取り紙がぶらさがっていて、無数のハエが仕留められていたものだ。
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