樋口由紀子
狐とも蛇とも別れ老いゆくよ
早良葉 (さわら・よう) 1929~
もともと夏に強い方ではないが、今年の暑さにはまいった。これが「老いゆく」ことなのかと思ったりもした。そんなときにこの句に出合って、気弱になっていた心が少しだけ軽くなった。
確かにこれは老いの一つの形である。若かりし日はどうしても「狐」や「蛇」が気になった。その一方で持て余してもいた。そういうものをだんだんと気にしなくなるのも「老い」の恩寵。そして、いままで見えなかった世界が見えてくるかもしれない。
「老いゆく」のは不安で寂しいもので、ついマイナス面ばかりに目がいってしまう。けれども、そればかりではないのだ。掲句は「狐」や「蛇」を登場させているが、重苦しさはなく、からりとしている。諧謔味がある。作者のユーモアを感じ、同時に作者の生真面目さも見える。
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