相子智恵
四つ折りの身の濡れてゐる秋の蛇 山崎祐子
句集『葉脈図』(2015.9 ふらんす堂)より
冬眠を前に、動きが鈍くなっている蛇なのであろう。草むらにじっとしているのか、〈四つ折り〉という描写によって、蛇の姿がじつによく見えてくる。臨場感のある、ハッとさせる写生句である。
蛇の生態に詳しくはないが、冬眠前は蛇も栗鼠などのように物をたくさん食べておくのだろうか。〈四つ折り〉には、それなりに肥えた大きな蛇が想像されてくるのだ。しかも〈濡れてゐる〉の艶やかさによっても、量感豊かな感じがしてくる。秋草の露にしっとりと濡れた、存在感のある蛇。そんなことは一言も書かれていないのだが、来るべき冬を前に、なぜかこの蛇から秋の豊かさが感じられた。
この後、蛇はするりと冬眠する穴に入っていってしまうのだろう。秋も深まってきた。あと半月もすれば立冬である。
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