相子智恵
クレヨンのぽくりと折れる雪の降る 岡田一実
句集『小鳥』(新装丁版/2015.11 マルコボ.コム)より
クレヨンの折れる音は「ぽきり」のような硬い音ではなく、たしかに「ぽくり」であるな、と掲句を読んで思った。同時にクレヨンの手触りや、匂いなどが懐かしく思い出されてきた。「ぽくり」という音に、懐かしさや温かみがあるからだろう。クレヨンが折れてしまうといった些細な寂しさも、子どものころには、大きく心に刻まれたものであった。
取り合わされた〈雪の降る〉もいい。静かに降り続けるやわらかな雪が「ぽくり」と響きあって、いっそう懐かしさを感じさせる。色とりどりのクレヨンと、真っ白な雪の対比も美しい。
ほかに〈極月のマーブルチョコが散らばつた〉という句もあって、これも、慌ただしくも華やかな行事の多い12月の季感に〈マーブルチョコが散らばつた〉の色合いや勢いがよく合っている。
色や光、音を感覚的に活かす作風の二句を楽しんだ。
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