樋口由紀子
かなしむべきか石鹸が減り過ぎる
小菅裕子 (こすげ・ゆうこ)
たかが石鹸ぐらいでとつっこみを入れたくなる。確かに洗剤や調味料がこんなに減っているのかとびっくりするときがある。家計を預かる健全な主婦ならば石鹸が減ることでもかなしむべき素振りを見せなくてはならないのか。それともかなしむべきことなのだと穿った見方をしているのか。
ちょっとしたことにいちいち感情移入し、過剰反応することへの揶揄のようにもとれる。おおげさでとぼけた表現も川柳の特徴の一つである。作者は他にかなしむべきことがあったのかもしれない。
〈母の背がまるくならないのもつらい〉〈席を立つ同じ景色を見るために〉〈三面記事の他人と歩く三日ほど〉〈ああ無情おんながとんと騒がない〉 川柳誌「創」収録。
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