樋口由紀子
人間の評価に顔が邪魔になる
山本翠公 (やまもと・すいこう) 1917~
犯罪や汚職など世間を騒がす人の顔がテレビで映しだされたり、新聞などで見ると、なるほどこの人は悪いことをしそうだとか、反対に悪いことをする人には見えないのにと思ったりする。しっかり見た目で左右されている。
掲句は作者独自の物の見方を提示しているのではない。まして異議と唱えているのでも憤っているわけではない。もちろん切実な思いがあるのでもない。共有性のフレームを掬い取り、一句にしている。確かにそういうことがあり、「顔」とはそういうものである。なんとなくそうだと思っていることをダメ押ししている。わざわざと感じる人もいるかもしれないが、これも川柳の一つの使い方である。『火山系』所収。
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