樋口由紀子
闇ばかり見て来たじゃがいものかたち
柴崎昭雄 (しばざき・あきお) 1965~
じゃがいもを掘るといろんなかたちのものが出てくる。へっこんだり、でっぱたり、同じかたちのものはひとつもない。しかし、その凹凸を「闇ばかり見て来た」と捉えることはまずない。土の中でいろいろあったのだ。
結婚して久しぶりに実家に帰ったときに母に結婚して性悪になったと言われたことがあった。結婚を闇と一緒にするのはどうかと思うけれど、掲句を読んで思い出した。親の庇護の元で責任のない娘時代と比べて、結婚するといろんなことに突き当たる。無理したり、傷ついたり、見えていることも見えないようにしたり、言いたくないことも言わなくてはならない。そりゃ性悪になり、でこぼこもできてしまう。丸いままではおられない。じゃがいもを通して、人生の哀歓を詠んでいると思った。
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