句集の読み方 その2・帯
西原天気
≫承前:句集の読み方 その1・付箋
「帯」はカバーの下のほうに巻く紙。「腰巻」と呼ばれることもあるようです。
通常は、惹句、販売促進のためのキャッチコピー等が印刷されます。
なぜ、カバーのほかにわざわざ帯が要るのか。例えば「待望の第一句集!」とかデカデカとカバーで謳うわけにも行かない。ちょっと品がない。それに、著者が自分で「待望の~」はおかしい。帯の文言は、きほん、著者ではなく、出版社・編集サイドの発信なのですね。
惹句以外に盛り込む情報として、「著者あとがきより」もあります。著者の文言をかいつまむ。著者のことばではありますが、抜粋という「編集」処理があるので、出版社・編集サイドという原則は崩れていません。
帯には、増刷のときなど、別の帯を掛け替えやすいというメリットもあります。比較的ローコストで刷新できる。例えば、その本が何かの賞を獲った。すると、「△△賞受賞!」と大書する。芸能人が番組で取り上げた。すると「Aさん、絶賛!」と大書。
帯とはつまり、書店で目の引き、本の魅力を端的に伝える目的と換言できそうです。
句集の場合、店頭に並ばないものにも帯がかかっていたりします。販売促進の必要がないのに、なぜ帯が要るのか? じっさい要らないかもしれません。でも、これがないと、見た目がなんだか締まらないという事情もあるようです。
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帯に、「自選××句」として句が抜粋されている句集も多い〔*〕。使うスペースはたいてい帯の裏表紙の部分(個人的に帯B面と呼んでいます)。
これ、習わしのようなものでしょうか。あるいは、帯の表(帯A面)を惹句スペースに使うと、裏(帯B面)にはもう載せる文言がない(句集の場合、実用書のように細々とした宣伝文句はそぐわない)ので、「自選××句」を並べておく。内容見本にもなりますし。
一方、この「自選××句」は、句集を読まずに礼状を書く人のためにある、という見方もあります。ページをめくらずとも、「自選××句」から適当に一句あるいは数句引いて、「誠に結構な句集でございます」と礼状が書けるというもの。
(ほんとか? そんな人、いるのか?)
この「自選××句」、私は読みません。なぜかというと、例えば300句を収めた句集があるとして、帯に「自選10句」が印刷されている。
え? じゃあ、あとの290句は、なんなのですか?
そう思ってしまうので。
あとの290句が不憫じゃないですか。
というわけで、帯の「自選××句」には目もくれず、ページをめくり、最初にある句から順番に拝読する、というのが、私の読み方です。
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ちなみに、自分のことで恐縮ですが、5年前に出した句集『けむり』は、ちょっと変わった造本をしていて、カバーがない。カバーのない、裸みたいな紙の束を、大きめの帯が包む形です(画像はこちら)。
帯の表(A面)には八田木枯さんからお言葉をいただきました。なんと大それたことを! いま思うと冷や汗が出ます。
と、ここまで、書籍、句集の帯について簡単に説明しましたが、この「帯」という部分、あらためて眺めてみると、いろいろとおもしろいのです。次回(明日)は、そのへん、つまり、帯を楽しむという観点から見ていきましょう。
「その2・帯」の項、つづく
〔*〕聞いた話ですが、ある人が、句集を贈呈され礼状を書いたところ、著者からお叱りを受けた。理由は、礼状に、自選××句から一句も引いていなかったから。「句の選び方がなっとらん!」というわけです。わがままで傲岸不遜な爺ィがいるんですね。それを怒るなら、自選××句だけ、数ページの句集にすればよかったのに。
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