樋口由紀子
フクロウのふところだろか眠くなる
一戸涼子 (いちのへ・りょうこ) 1941~
私はよく寝る。昼寝も夕方寝も御飯後寝もする。ときどき今は朝なのか昼なのか夜なのか、何寝の後かわからなくなり、目覚めるときに一瞬考える。掲句は「ふところだろか」だから、眠くなってくるここはどこだろうか思ったのだろう。夢を見る一歩手前の出来事だ。
フクロウは賢い鳥であり、守ってくれそうな鋭い眼光をして、それでいて胸のあたりはふわふわしている。温かくって、安心できそうである。フクロウのふところだったら気持よく眠れるだろうと想像する。もちろん、そのような経験はない。作者だって経験はないはずだ。しかし、確かに実感できて、なるほどと納得できる。書かれたことによって、その感触を共有する。「水脈」42号(2016年刊)収録。
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