相子智恵
洋食のガラスケースの額の花 大高 翔
『俳句四季』6月号「神保町」より(2016.05 東京四季出版)より
「レトロ」という言葉がオシャレな感じを伴って、すっかり定着したのはいつからだったろう。「レトロかわいいファンション」とか「ほっこりできるレトロなカフェ」とか「昭和レトロ」とか。
掲句、何でもない句だが「レトロ(オシャレな意味の)」を感じる。レストランのショーケースの中に、食品模型(あるいは本物のランチ)などが飾ってあるのだろう。そこに切り花の額紫陽花が添えられている。季節を表わすちょっとした演出として。
イタリアンやらフレンチやら、「本場の最先端の味」が手軽に食べられるようになった今、登場した時は最先端であった「洋食」という言葉は、古びつつも、レトロな雰囲気をまとい直して、「町の洋食屋さん」というまったく別ジャンルのイメージを形成して、今の時代に馴染んでいる。
ショーケースではなく「ガラスケース」という言葉の選択もまた、レトロを感じさせている。
そして「額の花」だ。この花の和風にも洋風にも合う、派手すぎず地味過ぎない見かけ。そして、古い歴史がありながら、現在もどんどん新しい品種が作られているという越し方も、この花自体が洋食と同じようなジャンルを形成しているような気がするな、と、掲句を読んでそう思った。
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