2016年6月28日火曜日

〔ためしがき〕 子規の俳句の数え方 福田若之

〔ためしがき〕
子規の俳句の数え方


福田若之


子規が俳句を数える際の助数詞は、最晩年の『病牀六尺』に至っても、「句」だったり「首」だったり、一貫していない。他の散文でも、しばしば、俳句を一首、二首と数えているのが見受けられる。それも、短い一節のなかで、二種類の数え方が混在していたりする。明確な基準があって書き分けているわけでもなさそうだ。要するに、筆まかせなのだろう。

おそらく、書き損じというわけではない。調べたわけではないので仮説でしかないけれど、当時はまだ、俳句は「首」とも「句」とも数えうるものだったのではないだろうか。たとえば、写真などは、もちろん一枚、二枚と数えることもできるけれど、ほかに、一葉、二葉と数えることもできる。俳句も同様だったのではないだろうか。

僕らが自然なものだと信じている常識は、しばしば、歴史的なものにすぎない。もちろん、今日においては、俳句は一句、二句と数えるものだということになっているし、そのことが子規によって覆されるわけでもないのだけれども。

2016/5/26

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