2016年7月15日金曜日

●金曜日の川柳〔高木夢二郎〕樋口由紀子



樋口由紀子






べんとうの無い児も君が代を歌ってる

高木夢二郎 (たかぎ・ゆめじろう) 1895~1974

戦時中の社会を描いた映画を観るとそんな馬鹿なと思うことが多々あり、不条理の悔しさで怒りが込みあげてくる。今はそんな時代でなくてよかったと安心していたが、そうとは言っておれなくなってきた。参議院議員選挙の結果にくじけそうになる。「国歌を歌わない選手は日本代表ではない」の発言もまかりとおる世の中になってしまった。

食べるものもないのに国歌を大きな声で歌わされ、国への忠誠心を強要される。戦時中に実際にあったことである。当時の理不尽な社会を鋭く捉えている。こんな時代があった。そして、こんな時代が近づいてきている。

高木夢二郎は反骨の雄と呼ばれ、迫力のある時事吟を書いた。どうすることもできない悔しさが作句の原動力だったのだろう。〈人殺す正しさなどは世に非ず〉〈平和なレンズみがいてもみがいても映る戦車〉〈拍手している間に米の値もバスの値も〉〈バカ力明治百年右に曲げ〉〈玉音放送あの日の暑さ未だつづき〉〈所詮人間である、がーしかし〉。

0 件のコメント:

コメントを投稿