【裏・真説温泉あんま芸者】
句集の読み方 その5・書名
西原天気
書名(句集タイトル)は、読者がまず最初に「読む」もの(著者名と同時に最初)。かなりだいじです。読者にとって、作者にとって。
で、これ、総花的に扱うのは手に余る。ごく限定的に、エピソード的に。
1 旧仮名含みのタイトル
若手の句集では江渡華子『笑ふ』、野口る理『しやりり』。数は少ない。理由は単純で漢字(あるいは漢字プラス助詞)のタイトルが圧倒的に多いので。
『しやりり』は、個人の感想としてはちょっと引っ掛かる。理由はこれまた単純で、sha-ri-ri (3音節)かshi-ya-ri-ri(4音節)か一瞬迷うから(ふつう迷わないって?)。
オススメは(いまさら奨めても遅いし、なんで私が薦めるのか?)、「Sha-Ri-Ri」とアルファベット表記。ちょっと Sha-Na-Na みたいでステキだと思うのですが。
2 長いタイトル
長いといえば、関悦史『六十億本の回転する曲がつた棒』。長いタイトルは、ぜんぶ言っていられないので、略されることになる。私のオススメ略称は『60棒』。
近刊では岡野泰輔『なめらかな世界の肉』。拙稿「世界のありどころ」で書いたとおり、略称『なめ肉』を推奨。
略称をもつ句集は、「愛されている」感があって、とてもいいと思う。どう略されるかを視野に入れて、長いタイトルを付けるのも一手。
そこで問題は、佐藤文香『君に目があり見開かれ』。ぜんぶ言う(フルネーム)のはちょっとツラいが、どう略すかが難しい。決定打がない。「きみめ」? 「きみかれ」?
で、この句集は、「黄色いやつ」と呼ぶことにした。
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