2016年9月30日金曜日

●金曜日の川柳〔大木俊秀〕樋口由紀子



樋口由紀子






ススキ対アワダチソウの関ヶ原

大木俊秀 (おおき・しゅんしゅう) 1930~

関ヶ原に行ったことがある。しかし、ここがあの「関ヶ原」と拍子抜けしたのを覚えている。そこは戦国時代を終焉させ、その後の日本の支配者を決定付けた天下分け目の戦いがあった「関ヶ原」とは到底思えなかった。

戦のあった昔には多くの人が殺され、殺し、死んでいったが、現在の関ヶ原はあたりまえだが平和である。かっての痕跡はまったく感じないおだやかな風景である。ススキとアワダチソウが咲いている。それはあたかも優劣をつけようと向かい合って風に揺れている。戦はご免してほしい。「対」はススキとアワダチソウで十分である。

〈貴方には何よりマスクが似合う〉〈蛇穴を出ると取られる消費税〉〈満天の星が見ていた流れ星〉 『満天』(2007年刊 武藏野文學舍)所収。

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