樋口由紀子
ススキ対アワダチソウの関ヶ原
大木俊秀 (おおき・しゅんしゅう) 1930~
関ヶ原に行ったことがある。しかし、ここがあの「関ヶ原」と拍子抜けしたのを覚えている。そこは戦国時代を終焉させ、その後の日本の支配者を決定付けた天下分け目の戦いがあった「関ヶ原」とは到底思えなかった。
戦のあった昔には多くの人が殺され、殺し、死んでいったが、現在の関ヶ原はあたりまえだが平和である。かっての痕跡はまったく感じないおだやかな風景である。ススキとアワダチソウが咲いている。それはあたかも優劣をつけようと向かい合って風に揺れている。戦はご免してほしい。「対」はススキとアワダチソウで十分である。
〈貴方には何よりマスクが似合う〉〈蛇穴を出ると取られる消費税〉〈満天の星が見ていた流れ星〉 『満天』(2007年刊 武藏野文學舍)所収。
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