樋口由紀子
おかめフト真昼の顔を持て余し
富田産詩朗 (とみた・さんしろう) 1926~
「おかめ」とはとりもなおさず愛嬌のある顔。お多福のお面のように低い鼻で赤くふっくらしている頬で、他の人を安心させてくれる顔だろう。そのおかめのそれもお日様が燦々と輝いている真昼の顔。
どうしてこういう顔をしているようになったのだろうか。いままであまり深く考えずに過ごしてきたが、「フト」そう思った。そんなもろもろに嫌気がさしてきたのだ。「フト」のカタカナ表記が核心を突いていて、ぴりりと効いている。
生きていれば、あるいは世の中には持て余すものや持て余したいものがわんさとある。おかめは女性だから、作者はそのような女の人を見てそう思ったのだろう。あるいは自分を投影したのかもしれない。鋭い目線である。〈花終る、花のことばのなかりしまま〉〈たはむれに空の深さへ唾を吐き〉 『川柳新書』(昭和31年刊)所収。
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