相子智恵
天網やあっけらかんと冬木立 米岡隆文
句集『虚(空)無』(2016.10 邑書林)より
「天網」は、悪人や悪事をのがさないために天が張りめぐらした網。悪事を行えば必ず捕らえられて天罰が下るということだが、それに続く〈あっけらかんと冬木立〉との取り合わせが面白い。
天から冬木立を見下ろすと、その枝の広がりが網目のようにも思われて天網を感じるし、または冬木立自身がその天網を潜り抜けて地上に落ちてきたように読んでも面白い。「あっけらかん」と悪びれない様子が、冬木立のごつごつした感じと相まって無頼な感じもする。
冬木立を見上げた先に広がる、冬のカーンと晴れた空。「粗くても決して逃さない」という天網を感じさせるのは、この季節特有の空の抜け方もある。
作者の視点が空からも地からも見ているようで、空間が不思議に広がっていく句だ。
●
0 件のコメント:
コメントを投稿