樋口由紀子
「と」にするか南瓜炊けたか「を」にするか
なかはられいこ (1955~)
川柳を書いていると助詞をどうするかで悩むことが多々ある。助詞で句柄ががらりと変わり、句の意味内容の方向も違ってくる。助詞一つで良くも悪くもなるのを誰もがまのあたりにしている。実生活でも似たようなことがありそうで、思い当たる。
「南瓜炊けたか」だが、そのリズムのよさですぐに思いついたのは「テッペンカケタカ」というホトトギスの鳴き声だった。南瓜が炊ける間にどちらにするか決めるのか、などいろいろ考えたが、最終的には意味内容はスルーして、「さてさて」というお囃子のように読んだ。どうするかを悩ましい事が、映えるように、引きたてるように、投入されたのではないだろうか。あるいは暗号のような気もする。
「南瓜炊けたか」を何食わぬ顔でぽんと置き、効果を引き出す。なかはらはオリジナリティーのある新しい書き方を見せてくれる。〈代案は雪で修正案も雪〉〈東京のキョでいっせいに裏返る〉〈今日のまぶたにいいことをしてあげる〉 「川柳ねじまき」#3(2017年刊)収録。
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