樋口由紀子
花びらは馬のかたちで着地する
月波与生 (つきなみ・よじょう)
今年の桜は開花からあっという間に満開になって、もう散り始めている。「花びら」が「馬のかたち」とはびっくりした。いろいろな花びらのかたちを聞いたことがあるが、「馬のかたち」は初耳である。馬のかたちで準備していた花びらなら着地した途端に颯爽と駆けだしていきそうである。
いろいろと想像してみた。花びらは桜本体から離れるときにやっと自己主張して、自らの意志で馬のかたちを選択したのではないだろうか。咲いているときは毎日が平穏で退屈だったから、自由に颯爽と駆け抜ける馬に憧れていたのだ。だから、馬のかたちになった。花びらは着地して、ここではないどこかへ走り出す。新たな旅立ちである。〈ライオンになる日に丸を付けてみる〉〈あせらない今日はきりんを眺める日〉 「杜人」250号(2016年刊)収録。
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