2017年5月15日月曜日

●月曜日の一句〔金子敦〕相子智恵



相子智恵






ひとすぢの藁の突つ立つ夏帽子  金子 敦

句集『音符』(ふらんす堂 2017.05)

ひと昔前までは素朴な農作業用、あるいは海辺で被るだけという感じだった麦藁帽子も、最近ではおしゃれな夏のファッションとして、街中で普段から被る人が多い。

そういえば、麦藁帽子ほど「素材」をリアルに感じる衣料品・装飾品というものもないな、と改めて思った。掲句、麦藁帽子の麦藁が一本、ぴょこんと立ち上がっている。元はきちんと編みこまれていたのだろうが、使っているうちに藁が一本出てきたのだ。〈突つ立つ〉の力強さには、帽子にまとまり切れない素材の主張が見えてきて、藁の「生きている(た)感じ」にハッとさせられる。

既製品の中にある、むき出しの野生。その力強さが〈突つ立つ〉に凝縮されている。淡々とした描写の中に、写生の力を感じさせる句だ。

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