樋口由紀子
鬼のカクランと言われ鬼かなと思う
小野範子
「鬼のカクラン」とはいつも極めて壮健な人が病気になることだが、大概は「カクラン」の方に注目する。それほどひどい症状である。しかし、掲句は「カクラン」よりも「鬼」の方に、私は「鬼」だったのかと、ひっかかってみせる。へえ~そっちの方と読み手を誘導し、「鬼」のイメージを一気に印象づける。
価値体系の横にあるものにこだわることをあからさまに出して、意表を突く。言葉尻をとって、おもしろがる。しょうもないことのなかになにかあるのだとちらっと思わせる。それらは川柳のひとつの立ち姿だと思う。このとぼけたユーモア感には俳諧性がある。「川柳研究」(226号昭和43年)収録。
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