相子智恵
雪がふるがふるがふると靴めりこみ 福田若之
句集『自生地』(東京四季出版 2017.08)所収
面白くて美しい句。
「雪がふる」で文字通りの光景を読者に見せながら、「雪がふるがふる」で「雪がふるということが、ふる」とメタな視点が表れ、入れ子状になっていく。
それが「雪がふるがふるがふる」までいくと、もう「ふるがふるがふる」は独り歩きして、雪が降り続いては降り積もるオノマトペのように感じられてくる。
そして最後に置かれた〈靴めりこみ〉でまた景が浮かぶのだが、「雪がふる」が解体し、雪がふるという言葉となって降り積もって、だけど靴が雪にめり込んだ時の音や冷たさの記憶はよみがえってきて、言葉が光景に再結晶していく俳句の詩的な過程の面白さを、一句の中でコマ送りのように味わった。
『自生地』という句集自体が、句集を編集していく過程を私小説のようにして見せていく句文集というコンセプチュアルな1冊で、構造が面白い。
掲句を始め、繰り返し出てくる「小岱シオン」や「かまきり」と「かまきりもどき」などのモチーフによって、例えば「歳時記」は、その見た目からデノテーションなものと思いがちだけれど、コノテーションの塊なのだということを再認識して、私は目が(頭が?)洗われた思いがした。
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