2018年1月15日月曜日

●月曜日の一句〔西村睦子〕相子智恵



相子智恵






炉の焔見て問うほむら見て答う  西村睦子

句集『幻楽四重奏』(月浪書店 2017.12)所収

〈炉話〉の本質とはこういうものかもしれないな、と思う。

相手の顔を直接見ながら話すのではなく、お互いに囲炉裏の揺れる焔をぼんやり見ながら会話をしている。相手の顔を直接見ないからこそ、ふいに相手の深い部分について問うことができたり、それに答えることができるのだ。

焔を共に見つめることで、お互いに深いところまで問うことができて一体感が生まれている……と読むこともできるが、掲句は〈焔〉と〈ほむら〉と、同じ火を書き分けることで、見ているものも同じようで実は違うのだという感じを出していて、どこまでいってもこの二人は個と個である、という読みのほうがふさわしいように思う。

つまりこの問いは、相手に対する問いでありながら自問自答でもあるということで、深い会話とは案外こういうものだと思う。そしてそういう問いを交わし合えた後には、やはり相手への信頼は深まる。

個々の違いをそのままに、それでいて深い信頼が生まれる瞬間というのは、何だか俳句を書き、読む幸せに近い気もする。

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