相子智恵
福耳を潰してねむる冬銀河 大石雄鬼
「きらめき」(「俳句四季」2018.2月号 東京四季出版)所収
仰向けではなく横向きになって眠っている。下側になった耳は枕に押し潰されている。ただの耳ではなはく「福耳」というのが面白い。
「冬銀河」は夢の中で見えているのかもしれないが、幻想的で大胆な取り合わせだ。〈福耳を潰してねむる〉という書き方は、眠っている自分(別の誰かかもしれないが)を外側から見ている感じがあり、その外側とは「冬銀河」からのように感じられてくる遠近感が不思議さを招き入れる。福耳のめでたさと、冬銀河の光の輝きが響き合っているようにも思う。それでいて福耳は潰されていて、ただ美しいというものでもない。不思議に印象に残る句である。
●
0 件のコメント:
コメントを投稿