浅沼璞
ぞちるらん上を下へと花に鐘 西鶴
『俳諧大句数』(延宝5年・1677)
西鶴の連句といえば、一昼夜23500句独吟という、あのギネス的記録を思う人が多いでしょう。これは一定の時間に的中した矢数(やかず)を競う京都三十三間堂の「通し矢」行事にあやかったもので、矢数俳諧とよびます。そのチャンピオンとして俳諧師西鶴の名は後世に残ったわけです。
西鶴の連句といえば、一昼夜23500句独吟という、あのギネス的記録を思う人が多いでしょう。これは一定の時間に的中した矢数(やかず)を競う京都三十三間堂の「通し矢」行事にあやかったもので、矢数俳諧とよびます。そのチャンピオンとして俳諧師西鶴の名は後世に残ったわけです。
無論この記録もいきなり達成されたものではありません。最初は百韻・16巻の1600句(1677年)、つぎに40巻の4000句(1680年)とステップアップした挙句の235巻(1684年)でありました。
掲出句は1600句ライヴ・巻三の発句。よく指摘されるように本歌は〈山里の春の夕暮来て見れば入相の鐘に花ぞ散りける〉(能因法師・新古今)。その結句を〈ぞちるらん〉とカットアップし、いきなり上五にすえただけではありません。本歌の〈鐘に花〉の語順をも〈上を下へと〉転倒させ、〈花に鐘〉と下五を仕立て、入相の花に鐘が散るという、文字どおり〈上を下へ〉の大騒ぎを演出。無心所着のナンセンスぶりが発揮されています。
で、さらにまた、その転倒を西鶴自身が脇の七七で受け、ナンセンスに拍車をかけます。
とへほにはねをひろげ行く雁
ハニホヘトをトヘホニハと逆詠みし、行く雁(帰雁)のハネへと言いかける巧みさ。〈とへほに〉の仮名文字は羽根の奇妙な動きを連想させもします。
なーんて評すのは自由やけど、凝りすぎやろ、これ。なんか羽根、凝ってきてしもたわ……By yukukari
で、さらにまた、その転倒を西鶴自身が脇の七七で受け、ナンセンスに拍車をかけます。
とへほにはねをひろげ行く雁
ハニホヘトをトヘホニハと逆詠みし、行く雁(帰雁)のハネへと言いかける巧みさ。〈とへほに〉の仮名文字は羽根の奇妙な動きを連想させもします。
なーんて評すのは自由やけど、凝りすぎやろ、これ。なんか羽根、凝ってきてしもたわ……By yukukari
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