〔ためしがき〕
砂糖水
福田若之
水に砂糖の溶けひろがっていくような切れ目のない時間にあって、ひとは老人たることを他人事として遠ざけることによってかろうじて若者として生きるにすぎず、若者たることを他人事として遠ざけることによってかろうじて老人として生きるにすぎない。そんなことをしているうちに、宇宙は思うよりずっと速く燃える。成長と老化の別もなしに、ただ身体の果てまでもの代謝が、ほんの束の間を灯し尽くすばかりだ。ひとは自らの晩年のうちに生まれ、幼年のうちに死ぬ。川は流れて、草花は揺れる。それだけだ。このそれだけが、それでも尊い。
2018/4/16
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