相子智恵
上げ泥に蝌蚪の形の現るる 右城暮石
茨木和生『右城暮石の百句』(ふらんす堂 2017.11)所収
水田の脇の用水路の水上げをしているのだろう。用水路の端の方から泥を浚って畦の上に出してゆく。上げた泥から水が引いてくると、中にいた蝌蚪の形が現れてきた。てらてらと光る泥を被っていて見えないが、その形で蝌蚪がいるとわかるのだ。もちろんこの後、蝌蚪は水田に戻されるのだろう。春の命の一瞬を引き出した上手い句だなあ、と思う。
本書は、茨木和生が師の右城暮石の句を選び解説した書から引いた。原句は句集『天水』所収である。
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