2018年4月24日火曜日

〔ためしがき〕 切株 福田若之

〔ためしがき〕
切株

福田若之

切株やあるくぎんなんぎんのよる 加藤郁乎

この句、「歩く銀杏銀の夜」と「或る苦吟難吟の夜」の二通りに読みうるということはすでに指摘されているのだけれど、「切株や在る」でひとかたまりという読みはどうだろう。

切株はあるか。この問いが「苦吟難吟の夜」に発せられるという読みは、奇妙なものに思われるかもしれない。けれど、この「切株」が次の句を踏まえたものであるとすればどうか。

切株はじいんじいんと ひびくなり 富澤赤黃男

切株の存否を問うこと。それは、もしかすると、「じいんじいんと ひびく」ような何かの存否を問うことかもしれない。だとすれば、この問いは「苦吟難吟の夜」のものとして、まさしくふさわしいものに思われてきはしないか。そんなことを、ふいに思った。

2018/4/19

0 件のコメント:

コメントを投稿