樋口由紀子
歳などは取らぬつもりでいる少女
丸山ふみお (まるやま・ふみお)
少女には一種独特の眩しさがある。反面いじわるな部分もある。だから「少女」なのだろう。私もそうだった。大人はお茶ぐらいでなぜそんなにむせるのか、なぜさっさと歩かないのか、なぜ何度も同じことを聞き返すのか、不思議で、ときにはうっとうしく、わずらわしく見えていた。
決して私はそんなふうにはならない、たとえ歳を取ったとしても歳の数が増えただけであり、今とそんなに変りなくやっていけるはずだと思っていた。しかし、ああこれが歳を取ることだとわかるのは実際に歳を取ってからである。
一方、「少女」の頃のしんどさはもうたくさんだということにも気づいた。比べることも競い合うことも歳を取るともうどうでもよくなる。というか、自分のことで精一杯で人のことなど気にする余裕がない。がんばる必要がないのはなんと気が楽で心が軽いことか。「番傘」(2018年刊)収録。
0 件のコメント:
コメントを投稿