GAN
生駒大祐
京都に行った。
横浜から京都までのぞみで約2時間。
昔から移動中は音楽やラジオを常に聴いていないと心が休まらないという性質で、
この日もずっとMaroon 5の"Sunday Morning"をリピートしていた。
そのせいで現代俳句協会のイベントで宇多さんにお会いした時にも
「俳人だったら耳を常に働かせていないといけない」というような皮肉(?)を貰ったこともある。
それ以来、できるだけ耳を使わずに俳句を作るようにしている。
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京都に着いたので観光でもしようかと思ったのだが
大学時代に京都に友人が割と多くいた関係で、
京都のめぼしい観光名所は既に見飽きている。
どうしようかと駅前をぶらぶらしていると、
NTTの研究所への無料シャトルバスが出ていた。
軽くググってみるとその研究所は本日見学自由らしい。
なにやら情報系の研究所で、内容は音響信号処理や量子コンピュータ、グラフ理論など多彩だ。
これは句材には事欠かなそうだった。
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40分くらいバスに乗るともう研究所だ。
ポスターセッションを見て回っていると、
音声属性変換技術の展示があった。
簡単に言えば「名探偵コナン」の蝶ネクタイ型変声器のような技術で、
誰かの声をある特定の人物がしゃべっているように声を変換するというものだった。
ベースとしてはGANという深層学習技術が使われていて、
声を変換して特定の人物Aさんの声に似せる変換器と、
入力された声がAさんの声なのか、機械がAさんの声に似せて作った声なのかを当てる識別器に分かれる。
最初は両方ともバカだった変換器と識別器が、それぞれ競い合って変換と識別を上手にしてゆき、
最終的には人間の声とそっくりな声に変換できる識別器とそれに比肩する精度の識別器ができあがるという寸法だ。
ライバルがいると上手になるというのはジャンプ漫画でも俳句でもよくある展開である。
尚毅居る裕明も居る大文字 爽波
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他にも俳味のある展示が多く面白かったが、
夕方になってきたので帰ることにした。
最近お茶にはまっているので自分用に煎茶を
家にはちりめん山椒を買い、帰りの新幹線に乗った。
窓際の席に座ると隣は英語圏在住らしい女性。
どうやら後ろの席の女性と友人らしかったので後ろと席を替わった。
「面白かったし善いこともできたし充実した一日だった」と気分よく僕はそのまま眠りに落ちるのであった。
10分後、僕がそもそも座る席を大きく勘違いしていたことが判明し事態は非常に面倒くさくなるのであったが、
それはまた別のお話。
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