相子智恵
トラックが去り片蔭を持ち去りぬ 柴田多鶴子
『季題別 柴田多鶴子句集』(邑書林 2018.7)所収
関東甲信地方では梅雨明けが宣言され、週末の東京は暑かった。少しでも日陰を選んで歩きたい季節となった。
掲句、明瞭な一瞬である。〈片蔭〉は炎天下に建物や塀などにできるくっきりとした日陰。停車中のトラックが作っていた日陰を歩いていたところ、トラックが走り去り、その〈片蔭〉までもが持ち去られてしまった。
トラックの日陰がなくなってただでさえ暑いのに、さらに去aっていくトラックの排気ガスの熱と匂いまで感じられてきて、ダメ押しな感じで暑い。片蔭がなくなった、ではなく〈持ち去りぬ〉としたところに恨めしさと残念さが出ていて、なんともいえない俳味があり、クスリと笑った。
0 件のコメント:
コメントを投稿