樋口由紀子
大声で泣けるのかそのポルトガル
徳田ひろ子 (とくだ・ひろこ) 1956~
川柳はたった十七文字だから完成するのは早い。だからの衝撃度も出る。短いので慎重でなければならないこともある。けれども、掲句は瞬発力ですべてをチャラにしている節がある。
「ポルトガル」は比喩なのか、単に語感なのか、虚構を作り上げているのか、実はよくわからない。「ポルトガル」が謎であり、突飛であるが、謎も突飛も日常から身をかわさないで、大声で泣きたい作者と二重写しになる。さらに「その」だから、手の届く触れそうな距離にあり、もどかしさも感じさせる。解釈はできなくても「そのポルトガル」には吸引力があり、怯んでしまいそうになる。
〈片足を上げた高さでポルトガル〉〈とまとならメメント・モリのこの辺り〉〈海抜の高さをシントラと競う〉 「ふらすこてん」(57号 2018年刊)収録。
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