浅沼璞
月代のあとや見あぐる高屋ぐら 西鶴
月代(つきしろ)は月の出の頃に空がしらむことだが、それに築城を言いかけた談林調(西鶴以外にも作例多し)。
「高屋ぐら」は軍事用の高い櫓。
場所は現・大阪府羽曳野市古市の高屋城跡――応仁の乱後、畠山氏の居城として築かれたが、天正3年(1575)織田信長の焼打ちにあい、廃城になったという。
〈月代の頃、高屋城跡の空を見上げると、かつての高櫓が一瞬みえた〉みたいなタイム・スリップ詠というか、天空の城詠というか。
いずれにしろSFチックな俳風だ。
作家・西鶴のノスタルジー云々といった近代的な解釈もあるが、? な感じは否めない。
ところで句の表記「ぐる」「ぐら」のせいか、
「高矢倉と呼んでいた倉グと揺らぐ」なんて気もしてくる。
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