〔週末俳句〕
移動時間
千野千佳
最近、急に実家に帰ることがあった。
上野駅から新幹線で1時間半。
「トランベール」をひととおり読んだあと、ひまなので、ネット句会に参加してみることにした。
Twitterで見つけた、某ネット句会。お題は「金」「足」「農」「業」。
駅に着くまで、それぞれのお題で1句ずつ、計4句作ってみることにした。
ノートに俳句の断片をランダムに書いていく。移動中に俳句を作るとき、今までは、頭の中で考えて、携帯電話のメモに入力していた。ところが最近、ある句会で、若くて品のよい美人がノートを大切そうにひろげてメモをとっている姿をみた。
その姿がなんとも良くて、ノートを購入し、持ち歩いている。
新幹線は空いていた。俳句を考えることに疲れると、どんどん田舎になっていく外の景色を見たり、トランベールについている路線図を眺めたりした。長野駅に着く。あとは「業」を考えるのみ。スマートフォンで業を含む熟語を探そうとするも、圏外。やっぱり電子辞書を買うべきか。歳時記はアプリのものを愛用している。ものをできるだけ持ちたくないので、本もあまり買わないようにしているが、角川ソフィア文庫の第五版歳時記は表紙がかわいいので買った。
駅に着くまでに、4句作り終えてネット句会の掲示板へ投句した。満足のいく句と、駄句だと思うものとが半々くらい。移動時間内で終了しなければならないので、開き直りができてよい。
帰りの新幹線では、行きに投句したネット句会の一覧が出来上がっていたので、選句と選評の書き込みをした。90句のなかから、17句選ぶ。17句もあるので、選評は1句につき一言ずつ。みなさん、なかなかお洒落な一言をつけていた。真似てやってみる。
移動時間に俳句を作る、俳句を選ぶのは、制限時間が強制的に設けられるので、とてもよい。
わたしは出張のない仕事なので、仕事中の移動には縁がない。
腹六分で仕事をして、移動時間にはひたすら俳句を作るサラリーマンみたいなものになりたいなと思う。この時代、腹六分でやっていける仕事を探すのはとてもとても難しいが。
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