樋口由紀子
ミルクキャラメルが痛みになっている
森田律子 (もりた・りつこ) 1950~
ミルクキャラメルが痛み? 甘さが心を癒してくれるのではなく、余計に傷心度が増していくということだろうか。ミルクキャラメルの必要以上に甘くて、あとあとまで口の中にべたべた感が残る、そんな味覚を思い出した。共犯めいた甘さがここにある。
ミルクキャラメルは作者にとっての個人的な思い出として、別の意味合いがあったのかもしれないが、「ミルクキャラメル」と「痛み」の組み合わせは意外だった。なるほどでもなく、解釈もできない。なんでも意味があると思い、なにがしかの意味の通路を見つけようとするのは悪い癖なのだろう。すべてのものに意味があるわけではない。「ミルクキャラメル」がせつなく、小宇宙を作り上げている。
〈ぬかるみは二足歩行がいいみたい〉〈雨が降るから鍵さしたままだから〉〈空き缶を蹴り空想の後始末〉〈水滴が水滴押して水滴〉 『川柳作家ベストコレクション 森田律子』(2018年刊 新葉館出版)所収。
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