2018年11月22日木曜日

●木曜日の談林〔前川由平〕浅沼璞



浅沼璞








  法師に申せあのいたづらを  由平(前句)
手習の手ぬるくさぶらふ二郎太郎  同(付句)

『大坂独吟集』(延宝三年・1675)

「さぶらふ」は候ふ/三郎をかけている。勉強(手習い)に身が入らない(手ぬるい)三兄弟のいたずらを、寺子屋の先生(法師)にチクってやろう――周囲の子たちはそう思っている。いたずら三兄弟をぎゃふんと言わせたい。藤子・F・不二雄チックな世界。

寺子屋(手習い所)という名称は、江戸以前の教育が寺で行われていた名残である。江戸の手習い所の師匠は、僧侶のほかに浪人・医師・神官などさまざまであった。識字率の向上に手習い所が貢献したことはいうまでもないが、読み・書き・算盤だけでなく、礼儀作法や道徳まで師匠ひとりで教えるケースが多かった。

生徒(手習い子)は6才~12才くらいまでで、総勢30名ほど。小人数学級の先取りといってもいいが、躾けのいきとどかない場合もあったことがこの付合からわかる。
しかも学年制がしかれていないから三兄弟が揃っていたずらをはたらくという寸法である。

*作者の由平(ゆうへい)は前川氏。宗因門。延宝末年、西鶴・遠舟とならぶ大坂俳壇・三巨頭のひとり。元禄期は雑俳点者に専念。

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