樋口由紀子
次の世は蝶で蜻蛉で舞わんかな
西山茶花 (にし・さざんか)
台所の小さな窓から見える外の景色、そこには蝶や蜻蛉が飛び回っている。この世では叶いそうもないが、せめて次の世では蝶や蜻蛉のように自由に飛翔でできるようになりたい。そうありたいと願う。さらりと言っているが内容は重い。
女性が自分の思うように生きることができない時代が確かにあった。自由に発言することも自由に行動することも許されていなかった。女性は家の中に居て、家の中のことだけをしていればいいと言われつづけてきた。家の外のことに関心を持つことも、意見を言うこともできず、行きたいところにも行けなかった。今も世界のどこかで抑圧されている女性たちがいる。〈冷めた紅茶を温めて飲んで人恋し〉〈花の木で居ればいいのに笑ったり〉〈歳ですよ バタンバタンと戸が閉まる〉 『瑠璃暮色』(1989年刊 かもしか川柳文庫)所収。
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