樋口由紀子
生きられて百になったら何しよう
野村圭佑 (のむら・けいすけ) 1909~1995
2018年中に百歳になる人は32000人以上で、1981年に1000人を超え、1989年に10000人を超え、百歳以上の人は年々急激に増えている。掲句は百歳まで生きた人がそれほどいなかったときに作られたのだろう。それにしてものん気で気楽で平和な一句である。
「朝、店を掃除しているときフッと浮かんだ句です。『なにしよう』といいながら自分で答を出してはおかしいんですが、百歳になっても川柳をつくりつづけていられたらこんな幸せなことはないでしょうね」と本人が対談で語っている。
こういう川柳もいいなあと思う。心身ともに健康であるからこそ詠める川柳であり、そう思える時代に生きているからこそである。自分自身も社会も信用している。〈歌舞伎から帰り返事も七五調〉〈そうそうは飲めぬ四斗樽の酒〉〈川柳がある君がいる君もいる〉
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