相子智恵
土に釘つきさす遊び桃の花 渡邉美保
句集『櫛買ひに』(俳句アトラス 2018.12)所収
〈土に釘つきさす遊び〉の主人公は子どもだろうか。偶然拾った釘を黙々と土に刺して遊んでいる、一人遊びの子どもの様子が思い浮かんだ。
幼い頃の遊びというのは大人から見ると訳がわからなくて、時に残酷だったりする。〈土に釘つきさす遊び〉もしかり。子どもにしてみれば、釘が「何かに刺さる」のが、ただただ楽しいのだろう。何かに見立てて遊んでいるのかもしれない。
釘をただ「刺す」ではなくて〈つきさす〉という言葉を選んだことによって、そこに残虐性が出てくる。しかしそれを「突き刺す」と漢字にせず平仮名に開くことで、今度は他愛無さやピュアな感じを、読者は受け取ることができる。句の内容にプラスして、言葉と表記の選び方がこの遊びの質感を決定づけている。
さらに〈桃の花〉が懐かしくて長閑だ。そういえば現代の都会の整備された公園では、釘を拾うことなどまず無いよな……と思う。昔の空き地や公園や庭に、錆びた釘が普通に落ちていた風景。そんなノスタルジーも、掲句からは感じられる。
[土に釘つきさす遊び]をネットで調べてみては!大分違う情景が見えると思います。
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