樋口由紀子
これからが躑躅やんかというときに
瀧村小奈生 (たきむら・こなお) 1962~
10連休の混雑をくぐり抜けながらあっちこっちに行った。花花が一斉に動き出したようで見事だった。藤に、こでまりに、ルピナスに、花水木に、などなどだが、今の季節の一番のお気に入りは躑躅だ。派手とは言えないが、あとでその華やかさに気づく。若い頃はそのよさがあまりわからなかったが、躑躅を見るとほっとする。
そんな躑躅が咲く、これからというときに、なにがあったのか。季節は一月ほど前のことだろうか。いやいやそんなことより、「なんやねん」とつい突っ込みをいれたくなる。「躑躅」の漢字の難しさだけを際立たせて、景がコトに、コトが景に、くるくると交互に回転する。目前に咲く躑躅とは違う、別の躑躅の世界を作り上げている。「川柳ねじまき#5」(2019年刊)収録。
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