相子智恵
近づくにつれて雑なる滝の音 杉阪大和
句集『思郷』(北辰社 2019.4)所収
ああ、そうだよなあと思う。一読、〈雑なる〉の中身をもっと細やかに写生してほしくなるような書き方で、〈雑なる〉が言葉通りの「雑」な表現に思えてしまうかもしれないが、言われてみれば確かに「雑」なのだ。
遠くで滝の音を聞いている時は、「ドーッ」と低い一音にまとまって聞こえている。それが滝に近づくにつれて、様々な水の音が響くようになり、滝のすぐ近くに立てば、水が岩にぶつかって立てる音はみんな違って騒々しくて、まるでパチンコ屋の中に入ったような感じだ。
滝を見ていてもそうだ。遠くから見れば一本にまとまった白い線のように見えるけれど、間近で見れば(当たり前だが)水の動きは統一などしていない。活き活きと「雑」なのである。
大づかみな中に、滝の本質を見事にとらえている句だと思った。
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