2019年7月25日木曜日

●木曜日の談林〔松臼・一朝・一鉄〕浅沼璞



浅沼璞








 よだれをながすなみだ幾度(いくたび) 松臼(打越)

肉食(にくじき)に牛も命やをしからん    一朝(前句)
 はるかあつちの人の世中(よのなか)  一鉄(付句)
『談林十百韻』上(延宝3年・1675)

前句は打越の嘆きを牛サイドから「薬喰」として取り成したもの。

それを付句は肉食を常とする西洋人サイドへと見込んだ。

(前句の場面を新たな観点から特定するを「見込」という)



「はるかあつち」などと突っぱなすのが談林らしい。

「の」のリフレインも効いてる。

もう牛も観念するしかないだろう。



これは前にもふれた事だけれど、この連句集を機に、江戸の無名結社の呼称であった「談林」が、宗因流の汎称として世に知られるようになる。



ちなみに十百韻(とつぴやくゐん)とは百韻を十巻(とまき)かさねたもので、つまりは千句のこと。

「とつぴやく」も「あつち」も促音がここちよく、談林っぽい。

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