樋口由紀子
勲章の欲しい七才七十才
橘高薫風 (きったか・くんぷう) 1925~2005
30年ほど前に作られた川柳である。当時の七十才はもう人生も上がりで、余裕を持って、余生を楽しんでいただろう。一方、今の七才はませていて、おもちゃの勲章なんかには見向きもしないだろう。時代時代の年齢のイメージに多少のギャップはあるが、案外、人間の意識の底には変わらないものが流れつづけている。
我が家にはちょうど七才と七十才がいるが、これといった共通項はない。七繋がり以外、一見無関係と思われる年齢に「勲章が欲しい」という一点でもって関係性を繋いだ。七才が欲しい勲章と七十才が欲しい勲章は全く別のものだということを当然の前提として、そこをユーモアでつないで、共感の器にすっぽりとはめ込んでいる。「勲章」は殆どの人にはほぼ関係ないものなので、ことさらに意識するものではないが、共同幻想を抱くにはもってこいのものかもしれない。あるいは「勲章」を象徴として、お上から褒めていただきたいことを揶揄しているのだろうか。
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